V-net教育相談事務所

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物語作文「ぼくとY・D」(今田の授業)

「ぼくとY・D」土方野万頭(小5)

 ぼくのとなりの席のノスケはちょっと変だ。というか、とてつもなく変だ。

 どんなところが変かって? たとえば、授業中にケシゴム・ドミノをはじめちゃう。食べ終わった給食のお皿とハシで楽器遊び。先生のハゲ頭めがけてエンピツ・ダーツ。学校にロボットを持ってきちゃう……。
 もちろん先生には怒られまくっている。でも、本人は人気者のムードメーカーのつもりなんだよね。実は、まわりから浮いちゃってるし、ちょっと避けられたりもしてるのに。

 だけど、ある日そんなノスケに大事件が起こったんだ。
 ノスケには、実は好きな女の子がいた。その名も相原アオイ。一学期の終わりに転校してきた。
 転校してきた初日からノスケはメロメロ。本人、モテモテのつもりだから、一生懸命仲良くしようとするんだけど、当然のごとく避けられちゃう。
 けれども本人、ある日ついに本気になっちゃった。
「なあ、ユウタ(ぼくの名前)。ちょっとなやみがあるんだけど」
「なぁ〜に?」
 ノスケが無理やり、ぼくを裏庭にひっぱっていった。
「あのさぁ、知ってると思うけど、おれアオイのことが好きなんだ」
「で?」と、ぼくはそっけなく言った。
「で、おれ考えたんだけど、今日こそマジメにアオイに告白しようと思うんだ」
「ふぅ〜ん」
「そこで今すぐアオイをつれてきてほしいんだ」
「へー、まぁーいいっかー」
 しかたなく、ぼくはアオイを連れてきた。アオイは、なぜこんなところに連れてこられたのかといった様子で、いやいやぼくの後についてきた。ノスケはキンチョーのあまりムンクの叫び状態になってしまっていた。
 でも、なんとか気をとりなおして、
「ちゅ、ちゅきでしゅ! ちゅ、ちゅ、ちゅきあってくたしゃい!」
 キンチョーのあまり、変なしゃべり方になっちゃった。その告白を聞いて、アオイが笑った。まさかオーケーなのか? と思った瞬間、
「無理。KYブタ野郎しねー! クソでも食ってろ!!」
 即答だった。ノスケは爆発した。ぼくは凍りついた。

 ノスケの告白から二週間がたった。ノスケはひきこもってしまった。自分の家から出ないで、もちろん学校にも来ていない。
 ノスケがいなくて学校のみんなはやったぜムード。うるさい中年オヤジ風少年がいなくなって、みんなホッとしているのだ。
「あいつがいない方がいいよねー」と初めはみんな言っていた。
 けれども、みんな気づいていた。たしかにノスケがいないのは平和だけど、平和ってけっこうたいくつだってことを。
 たいくつをだれよりも感じていたのは、ぼくだった。ノスケがいないと学校がつまらん。遊んでいても、いまいち盛り上がらない。どうやら、ぼくはノスケを友達だと思っていたらしいのだ。

 ぼくは何年かぶりにノスケの家をたずねた。昔、保育園が一緒だったので、その時何度かたずねたことがあった。
 ノスケの家に着き、ピンポンを押すと、なんと玄関に突然、ノスケが現れた。
 長い沈黙が続いた。
「チ、チッス、チッス」ぼくから声をかけてみた。
「な、なんだよ」ひさしぶりにあったせいか、ノスケは恥ずかしそうだった。
「あのさぁ〜」思いきって話そうと思った。
「てめぇーが来ないと学校がつまんなぁ〜い」
「……」
「早く学校に来てちょんまげぇ〜」
 ノスケは考えた。それから、
「しょーがねーなー。オレ様がいないと、やっぱりつまらないだろ!」
 とてもさわやかな笑顔だった。後光がさしているようだった。

 ノスケ復活! また元気にYD全開だ。みんなもちょっとノスケを認めるようになった。ぼくはちょっと安心した。
「おい、見てくれよ!! おもろいダンス思いついたんだ」
 そう言うと、ノスケは教室の前でアホの坂田のダンスをはじめた。
「アホ、アホ、アホォ〜の坂田〜」
 本人めっちゃご陽気。やれやれ、やっぱりもうちょっと、落ち着いてほしいな〜。