物語作文「ずっと友達 〜ミキとハルカの友情ストーリーPart3〜」(今田の授業)
「ずっと友達 〜ミキとハルカの友情ストーリーPart3〜」渡 美樹(小5)
「この前の模試の結果どうだった? 私は偏差値68だったわよ」
と、アミがとりまきのハナ・ミカ・エリにそう話している声が教室の外まで聞こえてくる。まだ早い時間なのに、朝から自慢話をしている。すると、ハナが、
「えー、すごーい! ハナは45だったー」
と、しゃべっている。それを聞いたハルカが、
「そんな成績よりミキの方がすごいよ。だって72だもん」
と、ハルカが自分の成績のようにミキを自慢した。それを言われたミキは少しはずかしそうにしている。するとエリが、
「じゃあ、ハルカはどうなのよ。エリは59だったよー」
「えー、ハルカは、57だよ」
ハルカの成績を聞いたアミが、
「じゃあ、ハルカはたいしたことないじゃない。私の方がよっぽどすごいわよ」
と、アミがいった。すると、ちょうどその時教室のドアがあいて、松永先生が入ってきた。
「今日から、偏差値60以上の人と、60以下の人に分けて授業するぞー」
と、松永先生がそう言うと、教室中が大さわぎ。
けれど、その話を聞いたハルカは、頭をうたれたみたいに、すごいショックを受けたようだ。
「今から分けるぞー。偏差値60以上の人は、3-Aにいけ。60以下の人は、この教室で授業するぞ」
松永先生にそう言われ、生徒は大さわぎをしながらわかれていった。その中で、独りハルカだけが動かなかった。
「早くわかれろー」
松永先生がそう言ったので、いやいやながらも移動していった。
休み時間になり、ミキがハルカに話しかけてきた。
「ハルカ。私ね、慶応女子に行くことになったの。だから、高校はいっしょに行けないの。ゴメンね……」
と、本当にすまなそうに言うミキ。その表情はどこか悲しげだ。
しかし、ハルカはミキと同じ高校に行けないのなら、死んだ方がましと思ったぐらい、すごくショックをうけている。ただでさえ、ミキと同じ授業をうけられないのに、高校までいっしょに行けなくなってしまった……。
「この問題がわかる人?」
先生がそう言ったが、ミキしか手があがらなかった。偏差値60以上の授業に、参加しているのは、ミキ、アミ、ミカ、アンナ、ユキ、カナ、カレン、ラン、ユイ、マリだ。その中でもミキは一番、頭がよかった。偏差値60以上なので、難しい問題もたくさんでる。それなのにアミは、とりまきのミカとずっとおしゃべりをしていたので何度も注意され、60以下の組にうつされてしまった。アミはそのことで、とても不きげんだった。
一方、ハルカは全然、授業が頭に入ってこなかった。アミと同じく、先生に何度も注意された。
「ハルカ、この問題をといてくれ」
先生に指されて、ハッとなり、となりの席のメイに教えてもらったぐらいだ。ハルカは休み時間に起こったことばかり考えていた。
その帰り。ミキはハルカのことを心配して、
「ハルカ。今日の授業どうだった?」
と、話しかけてくれる。しかし、ハルカは何も言わず、元気が出ないみたいだ。
ハルカが家に帰ると、お母さんが、
「ハルカ、高校受験のこと、考えておきなさいよ。ミキちゃんは慶応女子を受けるんだって? ハルカはスポーツが得意なんだから、スポーツが有名な高校に行けば?」
スポーツのことを言われても元気が出ないハルカ。どうしてもミキのことを考えてしまう。
お母さんの話を聞いていたお兄ちゃんがリビングに顔を出した。
「ハルカ、そうだよ。おれみたいにスキーで高校にいけばいいじゃないか。お前もスキー得意だろ。まさかミキちゃんといっしょの高校に行こうなんて考えるなよ。慶応女子なんて、チョー頭いいんだから、お前がいくらがんばっても無理だろうから」
お兄ちゃんにもそう言われ、ますます落ちこむハルカ……。
次の日。松永先生が、
「二つにわかれる前に、宿題をだせー」
といった。ハルカも宿題をだした。偏差値60以上の人の宿題をちらりと見ると、とても難しそうで、頭がおかしくなりそうだった。本当に来年はミキと会えなくなるんだと思うと、とても悲しくなった。
ミキは、いつもは良くしゃべるはずのハルカが、全然しゃべらないので心配して、
「ハルカ、だいじょうぶ? どうしたの?」
と言ってくれるが、ハルカは落ちこみすぎて話すことができない。けれど、ミキはミキでいろいろ考えているようだ。
その日の下校時間。
にぎやかにおしゃべりしながら帰る人たちにまぎれて、一人、とぼとぼと帰るハルカ。すると、後ろからミキが追いかけてきて、こういった。
「ハルカ、ハルカもいっしょに私と同じ高校を受験する?」
ハルカの顔に明かるい灯がともった。
「本当!?」
しかし、ミキと同じ高校となるとすごく勉強しなくてはならない。
「でも、ゴメン。やっぱりミキと同じ高校だなんてムリだよ。あんなに頭がいい高校にハルカが入れるわけない……」
しかし、ミキは本気の様子だ。
「だいじょうぶだよ。私がいっしょに教えてあげるから」
また、ハルカの顔に明かるい灯がともった。
「え!? 本当に? めいわくじゃないの?」
ハルカはこのことがまだ信じられないみたいだ。
「もちろん、めいわくじゃないよ。親友のためだもん」
「ヤッター! ありがとう!」
受験まであと半年。ハルカはのりこえられるのか。
ミキがハルカに教えている。
「ハルカ、この問題は……。ね、こういうふうに解くんだよ」
「うん。わかった」
ハルカはミキに教えてもらい、成績が少しずつのびている。今では偏差値60以上の組に入っている。そんなハルカを見て、アミは、
「えー、何で? ミキに教えてもらうなんて。私の方がぜったい上手く教えてあげられるのに」
ハルカはミキに教えてもらうようになってから、一人でもたくさん勉強するようになった。この日も、この前買った問題集を解いている。少しでもわからない問題があればミキに教えてもらうことになっていた。でも、最初は自分の力でできるところまで解いてみようと思ったのだ。
昨日、ミキに教えてもらったばかりなので、問題がすらすら解ける。
「ヤッター! この問題集が全部終わったー。明日の模試もがんばるぞー!」
問題集が全て終わり、自信もついてきたようだ。
そして、その一週間後。登校中のミキをハルカが追いかけてくる。
「ミキ、見て。偏差値が10もあがったー!」
「よかったね、ハルカ。私は一つしかあがらなかったよ」
「え!? 73になったの? すっごーい! ハルカはまだ67だよ」
どうやら模試の結果がかえってきたようだ。ハルカもたくさん勉強したかいがあり、成績もかなりのびた。
「ミキ、どうしよう。あと一ヶ月しかないよ……。本当にハルカみたいな人が慶応女子、うかるのかな……」
ハルカは、あと一ヶ月しかないので、自信がなくなってきている。しかし、ミキがはげましてくれるし、勉強がわからないところは教えてくれる。
「ハルカ、だいじょうぶだよ。ハルカにならできるよ!」
三週間前になった。
すると、ミキが突然、こんなことを言いだした。
「ハルカ、ゴメンね。私のおじいちゃんの病気が重くなって入院しちゃったの。だから、病院にいかなくちゃいけなくなったの。本当にゴメンね。一週間ぐらい教えてあげられないかもしれない。でも、一人でもがんばってね」
ハルカはミキに教えてもらえないとわかり、自信がゼロになったようだ。
「え!? うそー。ミキがいないなんて……」
ハルカは、絶望した。
ミキがいなくなってから10日間。まだミキは帰ってこない。
「えー。どうしよー。この問題、いくら考えてもわかんないよー」
ハルカは、ミキがいないのでピンチになり、ご飯ものどを通らない。それを見たお母さんが、
「ハルカ、ちゃんと食べないと、おなかがすいて勉強できなくなるわよ」
と言った。
ハルカが学校で英単語帳を見ながら泣いていると、アミがそばにきて、こう言った。
「あれ? ハルカ、こんな簡単な問題も解けなかったの? これは……、こうやって解くのよ。ミキに教えてもらっているんじゃなかったの? やっぱり教えるのは、私の方が上手ね」
「ほ、本当に!? じゃ、じゃあ教えてくれる? でも、アミはだいじょうぶなの? ミキはすごい頭がいいからだいじょうぶだったけど……」
「だいじょうぶに決まってるわよ。じゃあ、今日から学校に残ってやりましょ」
ハルカはアミに教えてもらえるとわかり、顔が少し明るくなった。
放課後。
アミとハルカは二人で勉強している。ハルカもちょっとは自信がついてきたようだ。
数日後。ミキからハルカにメールがとどいた。
”今日、帰ってきたよ! さっそく今日から、勉強しよ! じゃあ、今から30分後に私の家に集合ね”
ハルカはお大喜びだ。
「ヤッター! ミキが帰っってきたー! アミにも知らせなくっちゃ」
ハルカはアミにも連絡した。そして、三人でミキの家で勉強している。しかし、あと5日しかない。
「ミキ、ここ、こうやって解くんだよね」
「そうだよ、ハルカ」
「ミキ、ここ、これで合ってるわよね」
「うん。あってるよ、アミ」
今では、ハルカだけでなく、アミも教えてもらっている。アミは早稲田実業高校を受けることになっているようだ。
試験当日。
ミキとハルカがしゃべっている声が聞こえる。
「ハルカ、おたがいがんばろうね!」
「うん! 絶対、受かろうね!」
どうやら二人は自信満々だ。絶対、受かると思っているらしい。
カリカリ、カリカリ。
えん筆の音が聞こえる。ハルカはその音が気になって、なかなか問題が解けない。ミキはといえば、一番におわり、もう休けいしている。
その日の帰り道。
ミキがハルカに、こう言ってきた。
「そういえば、あの試験で名前を書く場所、わかりずらかったわよね。最初、どこにあるかわからなかったわ。ハルカはすぐわかった?」
ハルカはハッとしたように言った。
「もしかしたら……、もしかしたら……、名前、書き忘れたかも……」
ハルカの言葉に、とてもおどろくミキ。
「えー、うそ!? 名前書かないと不合格だよ」
「やっぱり不合格だよね。どうしよー」
「でも、問題集に出てた問題がいっぱいあってよかったね」
「うん……。でも、えん筆の音で集中できなくて……」
だんだんと声が小さくなり、不安になっていくハルカ。ミキは、いってあげる言葉がみつからない……。
それから二日後。
慶応女子で自分の番号を探すミキとハルカ。ミキは32番、ハルカは38番だ。
「えーと、あ! ちがったか。32番、32番……」
「ない、ない。38番がない。これもちがうか。38番がない……」
その時、ミキが自分の番号を見つけたようだ。
「あ! あったー! 32番があったー。ヤッター! 受かったー! ところで、ハルカはあった?」
ミキは受かったので大喜びだ。しかし、ハルカは、
「え!? あったの? よかったね、ミキ。やっぱミキはすごいなー。ハルカ、本当に名前書き忘れたかも……」
突然、ハルカの声をかき消して、ミキが言った。
「ハルカ、見てあそこ! ハルカの番号もあったよ!」
ハルカより、ミキが先にハルカの番号を見つけたようだ。
「あ! 本当だ。ヤッター! ついに受かったー!」
二人はだきあって喜んだ。その時、ハルカに電話がかかってきた。アミからだった。
「もしもし、ハルカ? 私はもちろん受かったわよ。そっちはどうだった?」
「もちろん、ミキもハルカも受かったよ!」
アミが受かったことで、さらに喜び、時間があっという間にすぎた。
その後、いつもの教室にいる、ミキとハルカ。
放課後の教室には、二人以外にはだれも残っていない。
「ミキ。これまで本当にありがとう。ミキには返しても返しきれないほどの恩があるよ」
ハルカがしんみりした口調で言った。
「ううん。そんなことよりハルカ、いっしょの高校に入ってくれて、ありがとう。これからも、ずーーーーーっと友達だよ」
その言葉にハルカは強くうなずいた。ミキも自分の言葉にうなずいた。二人は、太陽のように明るい笑顔で言った。
「これからも、ずーーーーーーっと友達!!」
〜おわり〜