物語作文「やったね! 大成功!!」(今田の授業)
「やったね! 大成功!!」渡 美樹(小5)
「来月の長野の修学旅行では、みんなの大好きなスキーに行くぞ―!」
朝の会のと中で、松永先生がそう言うと、クラスのみんなは大さわぎ。
「ヤッター! スキーだー‼」
ハルカはとても喜んでいる。他のみんなも大喜び。ところがミキだけは、どこか不安げ。
「どうしよう......」ぽつりと小声でつぶやいたミキ。
その日の午後、班決めの時間。
「ヤッター! ミキと同じ班だ。あ、あとアミも」
と、ハルカが喜びながら、そう言った。
「変な男子となるよりはマシかもね」
と、いつものように嫌味を言うアミ。
二人の横で相変わらず不安げな、ミキ。
「まあ、ミキは、当然スキーもプロなみなんでしょうけど」
ミキは、性格はおとなしいけれど、勉強もスポーツもできる優等生タイプ。なのに今は、
「う、うん......」
「スキーだけは、ミキに負けないわよ!」
そういうハルカは、勉強はあまりできないけれど、スポーツは万能、特にスキーは得意中の得意。
「そ、そうだね......」ますます暗い顔のミキ。
「どうしたのミキ? 給食、食べすぎた?」
「給食? 別に、食べすぎてないよ」
ハルカの問いかけにも、うかない顔のミキ。
どうした! ミキ......。
「ミキ。もっと授業に集中しろ!」
松永先生の声が教室中にひびいた。
あれから二週間。相変わらずミキは落ちこんでいて、授業に身が入っていない。
「あら、ミキの実力はこんなんだったのかしら? スキーいっしょに行ってあげるんだから、もっとちゃんとしてよね!」
そうアミに言われて、ますます落ちこむミキ。それを心配そうに見守るハルカ。
その日の学校からの帰り道、ミキと一緒に帰っていたハルカは、心配そうに口を開いた。
「何かあったの? 最近、給食あまり食べてないけど」
ハルカがそう言い終わると、雨が突然ふってきた。
「あっ、アミだ。車に乗せてもらおうよ」
と、ハルカがいいながらアミの車に乗り、ミキも後に続いた。
「しょうがないわね。どこまで?」
とアミが聞いて、ミキが答えた。
「じゃあ、私の家までお願いするわ」
「ハルカ。今、服かわかしてもらってるから」
そう言いながらミキは部屋にもどってきた。
すると、ハルカが心配そうにミキを見ている。
「ミキ。さっきの事だけど。どうしたの?」
「う、うん......」
「ミキ。本当の事を言って」
「......」
「さあ。はやく!」
ハルカがそう言うと、いきなりミキが泣き出した。
「うん。実はね、スキーすべれないの......」
「えー。まさかミキできないの!?」
ここは、長野県の西久保スキー場。
楽しそうに、ゲレンデをすべるミキのクラスメイト達。ミキは、とてもきんちょうしている。
アミは、スキー道具を全部自分でそろえたみたいだ。今は、クラスの女子を引き連れてすべっている。
「ミキ。はやくすべりなさいよ。何でそんな所につっ立っているの?」
松永先生もミキ心配して、
「おいミキ。すべらないのか? すべらないと、宿題の作文書けなくなるぞ」
ますますきんちょうするミキ。
おそるおそるすべり始めた。
スル......スル......スルスルスルー――。
少しずつ少しずつミキはすべった。
そして、ついに......!
ミキはすべれたのだ!!
「ヤッター! ミキできたじゃん!」
見守っていたハルカは思わず歓声をあげた。
実はスキーをすべれない事を告白したミキは、毎日うら山でスキーのとっくんをしていたのだった。
今や、ミキは、自由自在にすべれるようになった。
「さっ、さすがミキね。今回もまた、負けたわね。でも、次こそは、ぜったいに......勝つわ」
アミでもうらやましくなるほどミキは、上達し、ついにはハルカまでもが、
「あーあ。またミキに負けちゃった。今度こそはと思ったのに!」
と、いった。
でも、ミキはすばらしい笑顔で雪山をずっとすべり続けていた。
(おわり)