V-net教育相談事務所

国語力を育て、壊さない受験教育を実践します。

2013V-net合宿日記

合宿初日

合宿初日

7月25日。
毎田は三人の中高生を引き連れて長野で5泊6日の合宿をすることにした。
食事風呂睡眠以外の時間は全て勉強に割り当てる夏期集中勉強合宿である。これまで人生で12時間以上机の前に座った経験など一度もない子どもたちに、何とか集中して主体的に勤しむ習慣をつけることが目的。
合宿はブイネットに来て初の試みである。
以前勤めていた企業塾では何度も合宿に参加したことがある。苗場のホテル缶詰状態でひたすら授業をおこなう。
あれは一日中喋りっぱなしでかなり疲労する。生徒の方も聞いてばかりでつまんないだろう。
 
 
ブイネットの家庭教師になって、一般の企業塾と同じことをやりはじめるのか。まさかそんなはずはない。
 
きっかけは、参加者の一人である中学生のお母さんとの話し合いであった。
中学2年生の彼は、部活が忙しく家では疲れてぼおっとしているか、テレビをみることに執着しているかで、決まった時間に勉強する習慣もなく、定期テスト対策さえ中途半端なかたちで終わってしまうため、一向に成績が上向きにならないでいる。
本来彼は能力が高い。多くの同級生よりも観察眼に優れ、他人が意識的でないことに気付く。興味の幅も広く、別段卑屈になって勉強をしないという中2っぽさもあまりない。
だが、すぐ油断する。各教科のテスト対策をひとつひとつ綿密に注意深くおこなうことができない。それは独りで勉強しているときに「これではまだ勉強不足ではないか?」というダイアローグが足りていないと感じる。それを本人にいうものの「大丈夫次はちゃんとできるから」と言って自分の過ちに自覚的でないことが多い。
そんな状態をみかねて、あらゆる策を講じてきた彼のお母さんも、万策つきていっそのこと禅寺に入れて、てめえの考えの甘さを自覚させますか!と提案されたが、「それだったら一日中私が管理するような合宿のほうがいい」と主体的な独学を身につける最初のステップとして今回の合宿を企画するに到った。
 
今回の合宿は、一般の塾の合宿とは違う。塾の合宿では毎日何時間もおこなわれる集団授業についていくのに精一杯で、復習する時間がとれない。だが、私はそんなことしたくなかった。もともと授業を「聞ける」子どもならまだしも、そうでない子どもがそんな企画に参加しても吸収率が悪すぎる。だから勉強しか考えなくてよい場所で、自ら今勉強すべきことを考させるような合宿を行なう。勉強の仕方を勉強する。時には集中できずにくじけることもあるだろうが、その場合の対処法も提案しながら「独学する力」を身につけさせたい。
1日12時間基本的に独学する合宿をすると、残りの2人の高3男子に伝えると、それはおもしろそうだ!自分もその習慣を身につけたい!ということで、3人の生徒とともに長野にいくことになった。
 
長野はとても涼しく昼夜過ごしやすく、しかも南アルプスと中央アルプスに囲まれ、近くを小川が流れる景色のいい環境だ。
この恵まれた環境のなかで存分に6日間独学してもらおうと思う。
 
 
 
最後に合宿初日の予定を記す。
 
合宿初日
13時半 国立駅集合。メンバーは高校3年生2人、中学2年生1人。
16時半 長野駒ケ根に到着。
17時 オリエンテーション。
17時半 勉強開始(個人学習)
18時 風呂&夕食(揚げたて天ぷらと信州そば)
19時半 勉強開始(グループ学習)
21時半 就寝準備
22時 就寝

合宿2日目

7月26日。合宿2日目。
今日から丸一日勉強する。話し合いの結果、1コマ50分で5分休憩を1セットとすることに。
早朝5時、高校生2人が起床。だが、中2の男の子が起きない。頭が痛いとのこと。そのため彼のみ8時まで眠る。
6時より暗記科目の勉強をおこなう。目覚めてすぐの朝食の前の時間は、就寝前と同じくらい暗記力が上がる時間帯である。この時間帯に昨日暗記した項目を復習し、新たに覚えたい項目を脳にインプットする。
7時、それらについてテストをおこなう。毎田がテキストから問題をランダムに抜粋し、30題程度出題する。テストした二人の高校生は、ほぼミスもなく問題がなかった。
8時、朝の勉強開始。中2男子復活。「もう大丈夫です」と言って、机に向かう。昼食までの4時間はよく集中できる時間帯。苦手科目を強化すべきであると伝え、それぞれ個々やるべきことを選び出す。50分×4セット、よく集中していた。
 
12時半。昼食後、最も集中できない時間にさしかかると、全員うとうとして勉強がはかどらなくなる。後で聞いてみれば、本人達も「この時間帯が一番きつかった」ようだ。1コマ終了後、「あと1コマでお昼寝だ。力を振り絞れ」と伝え、全員気力で眠気、気怠さに打ち勝つ。 また、明日から少し昼食を減らして消化器官の働きを弱めることを提案。
15時半。分からなかった問題について質疑応答。高校生2人ともよく勉強している。何より勉強のやり方を毎回改善しながらより効率の良いものに変えようと努めているし、ぼおっと時間を浪費することも少ない。この状態を残りの日数も続けてほしい。
ちなみに、高校生のうち一人は以前教えていた生徒で、そのころ彼が中3だった。あの時精神が不安定でどうにもならなかったが、3年後の俺はもうちがうと言う。十分強くなっていると思う。どんな状況でもその集中力を持続してくれ。
19時。この日最後の勉強。その日の復習を中心に、自分のできなかったところを総ざらいする。朝と同じくらいこの時間帯は集中できたと皆口をそろえる。
確かに端からみてて、肩をもんだり、足を動かしたりなど落ち着かない素振りがほとんどなかった。
ただひとつ懸念することがあった。確かに夜は集中できるかもしれない。だが、それにかまかけて、この合宿の後夜勉強中心にしてしまうと折角つくりあげたいい朝のリズムが崩れてしまう。あまり夜に期待してはだめだと釘を刺す。あくまで入試は朝にはじまるのことを忘れないように。
この日は、中2男子がよく喋る日だった。初日ほとんど口をきかなかった彼が、「友達や家族に会いたい」とか「あいつ、今頃何してるかな、塾かな」と少々ホームシック気味になる。自分の身の周りのひとたちの大切さが分かったとも言い始める。
一方で「いつも家にいるときは外の、友達に会いたいとか思うし、家を出れば家族に会いたいって思うんですよね」とも言う。どこにいったって煩悩はかたちを変えてやってくるということに、彼自身気付き始めているのだろうか。あえて何も言わなかった。
「これが終わればあと何十時間で帰れるんですよ」「終わりがみえてくるとそれに向かってがんばれるから、やる気になる」
もしかすると彼は、今、ここで、独りで、勉強していることに関して、少し逃げ腰になっていたのかもしれない。
だが、ダイアローグを重ねて、自分が今やらなきゃいけないことから、どうやっても逃げられないということも分かっている。
その様子を見ていた高校生たちは「中2には戻りたくない、あの時間はきつかった。俺なら合宿に参加しない。」と私も含め皆彼の参加の姿勢に感心している。10代で精神が最も不安定になる時期に、彼は孤独と闘っているのだから。
では最後に2日目の日程を記載する。
5:00 起床、散歩、精神統一
6:00 暗記科目勉強
7:00 テスト
7:30 朝食 (和食)
8:00 朝の勉強
12:00 昼食 (たらこうどん)
12:30 昼の勉強
14:35 休憩、昼寝
15:30 夕方の勉強
17:35 風呂、夕食
19:00 夜の勉強
21:35 就寝準備

合宿3日目

7月27日。合宿3日目。
今日は三人とも5時に起床。支度をして6時まで散歩。
中2男子が率先して出かけて行った。歩くと頭がすっきりして勉強にのぞめる、と昨日の夕方の散歩で気付いたらしい。
彼はこの日少しずつではあるが、考えかたが変化しはじめた。前日あれだけ寂しいだの、友達に会いたいだの、あと何十時間も勉強しなければならないだの言っていたが、お昼に今日の調子を聞いていみると、「いろいろ考えることはあるけど、とにかく目の前のことをやらなきゃしょうがない」と言ってこの合宿に集中することを誓っていた。
口だけならいつものことだが、この日はそういうわけでもなく、普段みる彼よりも数倍主体的に自分のまちがいにとことん向き合っていた。昨日の私のアドバイスは少しも聞いていない素振りをしていたのに、一日でこうも態度をかえれるなんて素晴らしいことだと思う。
答えしか書かなかった数学の問題も、私がチェックするとき無言でペン入れして返せば、ため息一つすることなく黙々と丁寧に式を書き直していた。さらに、「この式の書き方だと評価されるのか」ということも質問しにきた。
彼の行動を見て思ったこと。ノートを丁寧に書かないというのは、「丁寧に書かねばならない」ということを忘れているからではないか。というのも、共同生活して気付いたのだが、廊下を歩いていると、彼がどこにいるかすぐにわかるくらい、彼のものがぽとぽと床に落ちている。(今回の参加者は私も含め皆第一子長男だからか、彼だけでなく皆共通して同じ癖を持っている。)
こういう自分の乱雑さに自覚的でないところに粗末なノート作りやテストの計算ミスの多さが関係しているように思われる。
ただ、「率先して料理の手伝いをしてくれるのはうれしいけれど、自分はそういうふうにものをぽとぽと落とす人間だということをもっと自覚しなきゃ」と何度か注意すると、この日の夜には彼の周りから勉強道具以外のものが片付けられていた。
今後、改善される様子を観察してみる。
ところで、この様子をみている高校生2人はというと、自分の分しかお茶を出さなかったり(本人いわく皆はいらないと思ったらしい)、時間どおりに風呂に入らないせいで勉強の予定時刻に遅れたり(本人いわく他の人が入ると思ったらしい)、かなりマイペースに生活している。
だが、勉強時間となると、一日通して抜群の集中力をみせている。
夜寝る前に一日の感想をきくと、どの時間帯が集中できて、いつぼおっとしてしまったのかを細かく意識できており、主体的に勉強できているように感じられる。
そこで「なぜ集中できるのかを研究して、帰宅後も同じ状態、モードになるように努めるとよいね」と伝える。
そういうお兄さんたちの様子をみて触発されたのだろうか。中2男子も、「勉強なんてもうめんどくさい」病になることなく、粛々と問題集に向き合っている。第一子長男の相乗効果。(私も含めて)
夜は、大人数の他のお客さんが近所にいたが、それにもめげず全員一所懸命に励んでいる。明日も集中できますように。

合宿4日目

7月28日。合宿4日目。
朝5時。今日も問題なく全員定時に起床。
この日は体調がよかったのか、ホームシックのような台詞を一度もいわなくなった中2男子。
実はこの三人のなかで最も判断がはやい。三人の意見が割れた時、妥協案を示すのはいつも彼だ。
どうすればいいかわからなくなったら、何をするか判断することができる。ダイアローグが単に足りていないわけではない。
それが分かってから「次何の勉強をすればいいですか?」と聞かれたとき、「何すればいいと思う?」と必ず言うようにした。そのうち自分で苦手だと思う箇所を判断して演習を繰り返しはじめた。テストしてみると、よく理解しているようだった。
その後も自分でタイマーの開始ボタンを押して率先して勉強しはじめたり、高校生が食べるのが遅くなっていても、自分だけ先に定時に勉強しはじめたり、想像以上に主体的に勉強しようとしている姿勢がみられた。
それは大学受験生である2人の高校生と色んな話をしたからかもしれない。私の知らないところで3人は話をしているようだった。
この高校生2人もかなり個性的だ。一人は文系難関私立志望で、もう一人は理系国公立志望。方向性が全くちがう。
だけど、2人とも勉強熱心で、主体性があり、思いやりがある。だから中2男子の後輩の話も嫌がることなく親身に聞いている。文系男子は、テレビのことも漫画のこともよく知っているから、中2男子の興味の範囲のことをいろいろ違う視点から教えている。同じく文系に傾いている中2男子も彼の話に興味津々である。
一方、理系男子は、中2男子の独特の理論を上手に展開して会話している。それに数学や理科の構造があまり好きになれない中2男子に問題解説もしてくれる。
理系男子は、頭がいい。他人に解説するのも上手で、自分の分かっていない箇所を詳細に語ることができる。だが彼はつまらぬ「見間違い」で、あるいは「四則計算のミス」で点を落とすことがものすごく多い。
ご飯粒を落としていることに気付かないような、服を裏側で着ていることに気付かないような、そんな「天然」なミスをする。そういうミスで問題を落とす様子を中2男子は隣でみているから、自分自身を客観視できるだろう。
合宿が始まる前に「皆第一子長男だから似たような癖があるかもね」というような話をしたが、こういう「ぽかミス」を減らすには「他人のふりみて我がふり直せ」作戦が手っ取り早いと思う。
この日は21時半就寝準備までほぼ予定通りに進んだ。中2男子が寝静まった頃、高校生と夜遅くまで、いろいろ話し合った。一人で闘ってんじゃないんだぞ。がんばれ受験生。

合宿5日目

7月29日合宿5日目
丸一日勉強できるのは今日で最後。
前日かなり遅くまで起きていたが、全員時間通りに起床。
他の団体客がいなくなり、合宿地周辺はまた静かな空間になる。
7時。朝の暗記科目の勉強からテストを出題。慣れてきた頃だろうから、テスト範囲とは少しずれるところから抜き打ちでいくつか出題。一人で勉強するときも、そういう圧を自分にかけながらテストしてやると、実力を試せると伝える。
朝食後、朝の勉強開始。
理系男子は昨日苦戦していた数列を今日も解き続けるという。できなくて苦しそうだったが、それでもやりつづけることは本当にすばらしいことだと思う。絶対に今日マスターしてくれ。
文系男子は相も変わらず、世界史の「世界」にどっぷりはまり、小論で扱われている「テーマ」に呼応してそれに対する自分の意見を私に伝えてくれる。あまりに楽しそうなので、「小論要約の練習にもなる世界史の歴史要約」を提案する。小学生が学級新聞を書くごとく楽しげな要約ができあがる。この楽しげに勉強することこそ、V-netの本随である。さすが小学校から事務所に通っているだけある。
中2男子も高校生に負けていない。自力で英語の新しい単元をまとめ、問題を解きはじめる。わからないところは質問にくる。問題解答のあと数時間後にその問題をテストするように私に指示する。
すばらしい。これほど自分で考え、「わからないところをなくそう」とする行動をとるなんて。
もちろん問題解答には荒さが未だに目立つし、そんなカンタンに「ぽろぽろ落とす癖」は治らないが、自覚的に行動しはじめたことは確かだ。
帰宅後も自分自身の甘さを十分に意識していってほしい。
昼食。この日は、昨日の水餃子の残りをだし汁に、塩バターラーメンをつくる。
この合宿を通して毎田が料理を担当している。インスタントを一切使わないようにし、添加物もできるだけ避けた。
作った料理は多岐にわたる。タイ風やきそば、タコライス、インドカレー、現地の野菜を使った蒸し料理、ソースカツ丼(駒ヶ根名物を模倣)など。
勉強しかしていないため、ご飯くらい楽しく美味しく食べたいと思っているだろうから、できるだけ色々なおもしろい料理を提供した。
昼食後、衣食住お世話になっている現地の画家さんが丁度作品展示のため梱包作業をしていた。皆で絵を見に行く。
ここ数週間で描いた、同じ時間を共有した絵を、皆じっくりみていた。中央アルプスを色彩豊かに描写した絵。きれいだった。
昼の勉強は、これまでの疲れがたまったのか、今まで以上に集中できない様子であった。
だから個別で質問タイムにした。それぞれ現在抱えている問題点をピックアップし、対話しながら最善の解法を見出す。
あっという間に2時間。
しかし、昼寝の時間に問題が起こった。設定していたアラームが鳴らず、1時間半も寝てしまった。
前の晩夜遅くまで話し合っていたから毎田も含め、やはりかなり疲れていたようだ。
理系男子は「どうしよう!予定が狂ってしまう!」と焦っている。
彼はいつもこんなふうに言う。予定が少しでも崩れると、全てがダメになってしまったような、言い方をして、その後の予定をこなす気力をなくしてしまう変な完璧主義者である。
「またそんなこと言って。次の夕方の勉強を30分追加して、お風呂の時間を短くしよう。みんないつもより速やかに風呂から上がるように。」と提案。
十分昼寝ができたおかげで、夕方の勉強はとても集中していた。
中2男子は苦手な関数のできなかった問題に手を出す。この合宿では娯楽がなく、あるのは英数国の教材のみ。それに手を出すしかない。きっとぼおっとして手がつかない時間もあるだろう。でもやることは飯以外、トイレに行くか、勉強するか、である。妄想は自由にすればよいが、いつかその妄想にも飽きてくる。そのときやっと、自分が嫌いで避けてきた問題に手を出すしかなくなる。こうして中2男子は関数を粛々と解き始めた。
高校生2人は、それぞれの勉強法によって解き続ける。理系男子はこの日でノート3冊目が修了間近になる。手を動かしつづけていることがわかる。
19時、夜の勉強開始。この時間から、これまでの復習を中心に解答する。次の日にテストしてほしいページを指定してくる者もいる。
それぞれの自分自身の問題意識から必要な勉強箇所を探し出す。
中2男子も含め、観察していても特にさぼっている感じがないので、すなわち苦手なとこをあえて避けるような探し方をしていないため、独学の力があるのが分かる。勉強にとって最も成長する子は、絶対この「独学の力」がある。これを養うことができれば、後は講師としてはモンテッソーリのように隣でそっと観察しているだけだ。
明日もこの調子でラストスパートをかけてほしい。

合宿最終日

午前中はいつもと同様の時間勉強。お昼より身の回りの整理をして、スタッフに別れの挨拶をする。

夕方東京到着。無事帰路についた。